この恋、きみ色に染めたなら
『紗希ちゃんにどうしても頼みたいことがあって。
紗希ちゃんにも会いたかったから、直接会って頼もうと思って、教室に来ちゃった』
悪気も感じていないのだろう…
山科先輩はニコニコと微笑み、そう話す。
こっちは教室に戻ったら、すっごい冷たい視線を向けられるというのにー…
『……私に頼みごとですか…?』
私は山科先輩にそう問いかける。
『そ。単刀直入に言うね。
紗希ちゃん、サッカー部のマネージャー、やってくれない?』
サッカー部のマネージャー……?
一年の“遊の美男子”こと比呂、二年の“炎の美男子”こと山科先輩が入部してるだけあって、すっごい人気の、あのサッカー部のマネージャー……?
私が……?
いや、無理…
『……あ、あの……私、サッカーのルール…いえ知識?とかよく分からないので、マネージャーとしてお役に立つことはないかと思いますので』
『あー、ルールとか知識とかなら全然大丈夫だよ。
紗希ちゃんのこと、プレーヤーとして呼んでる訳じゃない。
紗希ちゃんには、野郎共の癒し的存在でいてほしいだけ』
またもや私の言葉を遮り、山科先輩はニコニコと微笑み、そう話す。
癒し的存在って……
『…私、マッサージとかも上手く出来ないので……』
『あ、紗希ちゃんはマッサージとかお茶出しとかやらなくていいから』
『……へ……?』
山科先輩の言葉に私は首を傾げ、“よく分かりません”という思いを先輩に送る。