この恋、きみ色に染めたなら
*比呂がフッたんだよ…?
山科先輩の姿が完全に見えなくなり、私も教室に戻ろうと体の向きを変える。
『……!』
向きを変えた瞬間に映る、男女2人が仲睦まじく腕を組み、歩く姿。
『………紗希』
男女のうち、男の子の方に私は呼ばれ、体が硬直したかのように止まる。
『……比呂…』
紛れもなく、私の目に映る男の子は元彼の比呂だった。
『あー、前カノちゃんだ♪』
比呂の腕に自分の体を押し付ける女の子が甘い声で私を指差し、そう言った。
『あ、前の前カノちゃんか♪』
女の子が言うように、その子はこの間の子と違う子だった。
『私、佐伯由香利って言います♪
今、比呂とお付き合いしてます!
前々カノちゃん、比呂とケンカした時は仲直りの仕方とか教えてね?』
その子の話す言葉の後には“♪”か“♡”が付くような、そんな感じ…
『あ……比呂とお幸せに。』
私はそう言い、二人に軽く会釈をし、その場を離れようとした。
ちょうど比呂の横を通り抜けようとした、その時-…
誰かの手が伸びてきて、私の腕を掴んだ。