この恋、きみ色に染めたなら

*比呂がフッたんだよ…?






山科先輩の姿が完全に見えなくなり、私も教室に戻ろうと体の向きを変える。






『……!』




向きを変えた瞬間に映る、男女2人が仲睦まじく腕を組み、歩く姿。







『………紗希』



男女のうち、男の子の方に私は呼ばれ、体が硬直したかのように止まる。






『……比呂…』



紛れもなく、私の目に映る男の子は元彼の比呂だった。






『あー、前カノちゃんだ♪』


比呂の腕に自分の体を押し付ける女の子が甘い声で私を指差し、そう言った。





『あ、前の前カノちゃんか♪』



女の子が言うように、その子はこの間の子と違う子だった。







『私、佐伯由香利って言います♪

 今、比呂とお付き合いしてます!

 前々カノちゃん、比呂とケンカした時は仲直りの仕方とか教えてね?』



その子の話す言葉の後には“♪”か“♡”が付くような、そんな感じ…







『あ……比呂とお幸せに。』




私はそう言い、二人に軽く会釈をし、その場を離れようとした。




ちょうど比呂の横を通り抜けようとした、その時-…





誰かの手が伸びてきて、私の腕を掴んだ。





< 199 / 324 >

この作品をシェア

pagetop