この恋、きみ色に染めたなら
今、この教室に私が乱入したらどうだろうか。
私の顔を見て、彼は、あの子はなんて言うだろう。
彼は私の顔を見て、あの子に言ったとおり、別れを切り出すだろうか。
でも、私の足はそこから動かない。
呆気にとられて動けない、でもなく。
何が起きてるのか、事態が把握できずにどうしていいか分からないから動けない、でもない。
『ねぇ比呂?
由紀、比呂と早くカレカノになりたいよー』
『うーん…
じゃ、今から電話で話すわ』
ドア越しに彼の言葉が聞こえて、ほんの数秒後に私の制服のポケットに入ってる携帯が振動し始める。
やばい!
そう、思ったときはもう遅い…。
『あれ…?
どこかでマナーモードの時のバイブ音がしない?』
甘い彼女の言葉の後、彼がドアを開けて、教室から顔を出した。