この恋、きみ色に染めたなら









『……なッ……成田先輩も紗希を好きだっていうなら……その台詞は使えると思いますけど。

 先輩は紗希のことなんて好きでもない』





『好きだよ、紗希のこと』






比呂の言葉を遮るように先輩が冷静な声でそう言った。










『………は………?』




比呂が発した言葉、私も思わず心の中で呟いてしまった。








え………今、先輩………





“好きだよ、紗希のこと”って言った………?







先輩……私の事…好き……なの………?















『俺が紗希のことを好きなら問題ないでしょ?

 だから紗希のこと、返して』






先輩はそう言い、私を自分の背中に隠すように、背後に回らせる。












『………本気で好きなんですか?

 紗希のこと、本気で……』










比呂は先輩に問いかける。




でも先輩はニコッと笑って、そして、






『好きだよ、紗希のこと』





と、答えた。


















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