この恋、きみ色に染めたなら
『だから紗希に近づくな。』
ドスのきいた声で、先輩がそう言うと、比呂は明らか萎縮していいた。
『………分かりましたよ……。
紗希が両想いなら、諦めますよ…!』
半ばヤケになったかのような言い方をした比呂。
けれどその言葉の後、比呂はその場から離れていった。
比呂の背中が小さくなるにつれ、
私の心臓の鼓動が速くなっていくー…
だって先輩………
私のことが好きって………
嘘でも冗談でも、嬉しい……
『……あの……先輩………』
私が先輩の背後に声をかけると、先輩はユックリと振り返る。
『…何』
ぶっきらぼうな言い方にも私はドキドキしている。
先輩、私、さっきの言葉、もう一回聞いてもいい…?
『……あの…先輩、今……私の事………』
『紗希のこと好きって言ったよ、俺…』
パッと答えられた、その言葉に、私の心拍数も脈拍数もすごい数値を叩きだしそうな勢いだー…
『………あの……それ……本当ですか………?』
『好きだよ、後輩として。絵のモデルっていう変な縁がある女として』
先輩の言葉に私は首を傾げる。
……ん…?
それって、ただの後輩としてってこと?
絵のモデルっていう、そういう存在としてってこと………?
『ばーか。未練がましい俺が簡単にお前に落ちる訳ないだろ?』
その言葉の後に見せた、先輩のニカッていう笑みに私は肩を落とすー…
……そ、そうですか……そうですよね………。
もう!未練がましい男なんて大嫌い…!