この恋、きみ色に染めたなら
『紗希、成田先輩のことで泣いてるんです……』
先輩の問いかけに答えない私に代わって、凪が成田先輩に答えた。
『俺?』
凪の言葉に、私の顎に添えている指を離し、そして凪を見つめる。
『紗希……成田先輩の事が好きだから。
大好きだから…苦しくて、泣いてるんです…!』
『…な…凪…!』
既に凪の言葉は先輩の耳に入ってしまったと思うが、私は声を出して凪の手を掴む。
『……ち…違いますよ…!
先輩は……涙と何も関係ないです』
先輩のことが好き、だけど苦しい、なんてー…
そんなことを先輩が聞いたら、“じゃ、やめれば”って言われるに決まってる……