この恋、きみ色に染めたなら
先輩はそのまま美術室へと私を連れてきた。
美術室の扉を開け、私を中に入れさせるとその扉を閉めた。
『で、なんで俺を好きだからっていう理由で泣いてた?』
先輩はそう言い、怒った顔で私を見つめてくる。
全身から伝わる怒りのオーラが私の背筋をピンとさせる。
『……先輩を好きなら泣きませんよ……?
好きな人には笑っている顔を見てもらいたいものじゃないですか?
だから……先輩のことで泣くとか………』
そんなことで泣くこと………
あるわけがない……でも自分の心に嘘をつこうと思えば思うほど胸が苦しくなって……
『俺、嘘つく女は嫌い』
嘘をつくって……
だって、先輩にどう言えばいいって言うの……?
想っても想っても届かない恋が苦しいんです、って?
振り向いてもらえない恋がこんなにも辛いんです、って?
そんなこと言ったら……
先輩は“もうやめれば?”って言って、それでこの恋を終わらせようとするだけじゃない……
この恋が、終わらせられちゃうだけじゃないー………
『…………嘘つく女って………。
だって……だって……仕方ないじゃない………。
私がどんなに先輩を想っても……どんなに好きだって伝えても……先輩は紗季さんを忘れない……想い出になんかしない……
苦しくて……辛くて……悲しくて…………でも…そんな気持ちを先輩に言ったって……先輩は“やめれば”って……言うだけでしょ……?
私は先輩を諦めたくない……先輩を好きでいたい……私が想うのと同じくらい……先輩にも私を好きになってほしい………!
………でも………先輩はそんなこと…してくれないじゃないですか……。
だから………どうしようもない想いに…どうしようもない事実に……涙が出ちゃうんですよ………』