この恋、きみ色に染めたなら








先輩はそのまま美術室へと私を連れてきた。




美術室の扉を開け、私を中に入れさせるとその扉を閉めた。











『で、なんで俺を好きだからっていう理由で泣いてた?』







先輩はそう言い、怒った顔で私を見つめてくる。



全身から伝わる怒りのオーラが私の背筋をピンとさせる。











『……先輩を好きなら泣きませんよ……?

 好きな人には笑っている顔を見てもらいたいものじゃないですか?

 だから……先輩のことで泣くとか………』










そんなことで泣くこと………




あるわけがない……でも自分の心に嘘をつこうと思えば思うほど胸が苦しくなって……












『俺、嘘つく女は嫌い』









嘘をつくって……





だって、先輩にどう言えばいいって言うの……?




想っても想っても届かない恋が苦しいんです、って?




振り向いてもらえない恋がこんなにも辛いんです、って?








そんなこと言ったら……




先輩は“もうやめれば?”って言って、それでこの恋を終わらせようとするだけじゃない……






この恋が、終わらせられちゃうだけじゃないー………













『…………嘘つく女って………。

 だって……だって……仕方ないじゃない………。

 
 私がどんなに先輩を想っても……どんなに好きだって伝えても……先輩は紗季さんを忘れない……想い出になんかしない……

 苦しくて……辛くて……悲しくて…………でも…そんな気持ちを先輩に言ったって……先輩は“やめれば”って……言うだけでしょ……?


 私は先輩を諦めたくない……先輩を好きでいたい……私が想うのと同じくらい……先輩にも私を好きになってほしい………!



 ………でも………先輩はそんなこと…してくれないじゃないですか……。

 だから………どうしようもない想いに…どうしようもない事実に……涙が出ちゃうんですよ………』










< 235 / 324 >

この作品をシェア

pagetop