この恋、きみ色に染めたなら
第5章
*この恋、俺だって本気だよ
『じゃ、俺、行くから』
先輩がそう言ったのは一年の教室があるフロアに続く階段。
あれから少しだけ先輩と他愛のない話をして、そして先輩がここまで送ってきてくれた。
『………先輩…!
あの……ありがとうございました!』
私がそう言うと、先輩は口角を上げて微笑む。
『お前を笑わせんのって、案外難しいな……』
『…………え………?』
『泣いてる顔より、笑ってる顔の方がお前は合うよ』
先輩はそう言って、私を一度見つめてから、背を向けた。
でもすぐにくるりと振り返り、
『そういえば……お前の友達にも謝っておけよ?
俺からも謝ってたって…』
『……ぶ……』
思わず先輩の言葉に吹き出してしまった。
“氷の美男子”とか言われてるくせに、凪にも謝っとけって……
そういう気遣いも出来る人なんだな、先輩はー……
『何笑ってんだよ、てか早く行け!』
少し頬を赤く染めて、そういう先輩の姿は初めてで……
私は更にクスクスと笑ってしまった。
『ばか、お前、放課後あけておけよ!』
先輩は言い逃げのように、そう言って階段を上り始めた。