この恋、きみ色に染めたなら
私も階段に背を向け、教室の方へと歩いていく。
二限目の授業はちょうど終わったらしく、教科担当の先生が教室から出ていくのを確認して、それから私は教室に入った。
私の姿を見つけた凪が一番に駆けつけてきて、心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
『……凪。先輩が“ご心配をおかけしてすいません”って言ってたよ』
私がそう凪に言うと、凪は首を傾げている。
『先輩のこと、諦めなくていいって……先輩が言ってくれた』
私は凪の手を掴み、そう言うも凪は言葉の意味を理解していないのか、少し戸惑う顔で私を見つめてくる。
『……先輩が私のこと好きになるように努力してくれるんだって。』
私の言葉に凪の瞳が揺れ始める。
『………紗希……それって……成田先輩が紗希を恋愛対象にしたってこと……?』
『恋愛対象になれたかは……うーんって感じだけど。
でも“諦めなくていい”って、“傍にいろ”って言ってくれたよ』
私の言葉に凪の目から大粒の涙が溢れだす。
『……え……凪……!?どうしたの……!?』
思わず凪の手を掴む自分の手に力を入れてしまう。
だって、凪は泣かないんだよ……
凪の泣いてるところなんで見たことないからー…
そんな凪が目の前で泣いてるなんて………
『だって……だって……先輩に……紗希が先輩のことで泣いてるとか……私、言っちゃって……。
余計なこと言っちゃって……それで……紗希の恋が………』
………凪。
すっごい心配してくれてたんだね………