この恋、きみ色に染めたなら





ただ静かに流れる時間の中、私の緊張と不安は大きくなっていく。










ーーガラッ




山科先輩が美術室の扉を開けると、誰もいない、静かな空間があるだけ。


その中に山科先輩は一人、黙々と入っていく。








『紗希ちゃん、俺の予想だと。

 俺、紗希ちゃんにフラれる、よね?』






美術室の中央まで来た山科先輩はそう静かな声で問いかけてくる。






静かな部屋、静かな声、そのあまりに静かに感じるこの空間で私の緊張と不安は更に増大していく。













『………山科先輩のお気持ちはとても嬉しかったです。

 でも、私はやっぱり成田先輩のこと』






『どこがいい?』






私の言葉を遮るように、再び問いかけてくる山科先輩ー…






“どこがいい”って……先輩の好きなところとか……かな?












『成田先輩って、忘れられない人がいるんでしょ?』





『………え……?』







耳を疑った。




どうして山科先輩がそのことを知ってるの……?








だって…みんなが知ってる噂の中に、成田先輩に忘れられない人がいるなんて聞いたことないよ…?





そんな噂なんてなかったよ……?









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