この恋、きみ色に染めたなら
『一部の生徒なら知ってるよ。
成田先輩がここで過ごした、幼馴染さんのこと、忘れられないって。
その人のことが忘れられなくて、だから告白も断ってるって…』
そう言い、山科先輩は振り返るー…
山科先輩の目はとても真剣で、その表情はとても怖かった。
『ごめん……紗希ちゃんを傷つけたくて言ってる訳じゃない。
ただそんな人を好きでいて紗希ちゃんは幸せなのかなと思って…』
『そんな人を好きでいても、紗希ちゃんが傷つくだけじゃない?
紗希ちゃんが泣いて、不安になって、辛いだけじゃない?』
山科先輩の言葉に、私の胸はズキズキと痛む。
この胸の痛みを捨てたくて、私は口を動かそうとする。
『……私、もう泣いてます……。
この恋は叶わないかもしれないし、傷つくだけの恋かもしれないって…ずっと不安で仕方ないです。
でも…どんなに迷っても、どんなに泣いても……それでも私は成田先輩のことで泣けるんです。成田先輩のことで迷って、不安になって……それでも成田先輩のことしか想えないんです。
だから……山科先輩の気持ちを受け取ることはできません。
マネージャーの件も……』
そこまで言った時、山科先輩は怒った顔で私の所に歩み寄ってきた。