この恋、きみ色に染めたなら









『紗希ちゃん、まだ分からない?


 紗希ちゃんがどんなに成田先輩を好きになっても、成田先輩は本当の意味で紗希ちゃんに振り向いたりしない』






すぐ目の前まで来た山科先輩は私を見下ろしながら、低い声でそう言った。





“成田先輩は本当の意味で紗希ちゃんに振り向いたりしない”その言葉が胸の奥の方に突き刺さる。



突き刺さった瞬間から、そこを中心にズキズキとしたものが広がっていく。












『紗希ちゃんは一途に想っていれば、いつか成田先輩が自分に振り向いてくれるとか思ってない?


 でも、紗希ちゃんの一途さは成田先輩を困らせるだけで、迷わせるだけだよ?』










『………どういう意味ですか……?』





自分でも分かる、自分の震えた声にー…



声が震えてしまうほど、山科先輩の言葉達に私がどれだけ動揺しているのかー…












『紗希ちゃん、自分には想っている人がいるのに、想っている人とは違う人に告白されてどう思った?

 好きな人がいるから困る、とか、迷惑とか……そう思わなかった?』







比呂に復縁をお願いされた時、


山科先輩に告白された時ー…





私は……一度は本気で好きになった人に、学校を騒がせている先輩に告白されても、それでも尚、私は成田先輩のことが好きって思ったー……











< 249 / 324 >

この作品をシェア

pagetop