この恋、きみ色に染めたなら
『紗希ちゃん、まだ分からない?
紗希ちゃんがどんなに成田先輩を好きになっても、成田先輩は本当の意味で紗希ちゃんに振り向いたりしない』
すぐ目の前まで来た山科先輩は私を見下ろしながら、低い声でそう言った。
“成田先輩は本当の意味で紗希ちゃんに振り向いたりしない”その言葉が胸の奥の方に突き刺さる。
突き刺さった瞬間から、そこを中心にズキズキとしたものが広がっていく。
『紗希ちゃんは一途に想っていれば、いつか成田先輩が自分に振り向いてくれるとか思ってない?
でも、紗希ちゃんの一途さは成田先輩を困らせるだけで、迷わせるだけだよ?』
『………どういう意味ですか……?』
自分でも分かる、自分の震えた声にー…
声が震えてしまうほど、山科先輩の言葉達に私がどれだけ動揺しているのかー…
『紗希ちゃん、自分には想っている人がいるのに、想っている人とは違う人に告白されてどう思った?
好きな人がいるから困る、とか、迷惑とか……そう思わなかった?』
比呂に復縁をお願いされた時、
山科先輩に告白された時ー…
私は……一度は本気で好きになった人に、学校を騒がせている先輩に告白されても、それでも尚、私は成田先輩のことが好きって思ったー……