この恋、きみ色に染めたなら





成田先輩の言葉に山科先輩が唾を呑みこむ。




それくらいに静かな空間の中で発せられた、意味のある重い言葉ー…









『忘れられない奴がいる、その事実は俺が紗希に本気になっても苦しめる。

 紗希の想いを受け取るなら、紗希が不安にならないようにしたい。


 その為の気持ちの整理期間が俺には必要だと思う。

 だから、俺にとっても紗希は大事な子だから、紗希を諦めてよ』








成田先輩の言葉に涙が出る……



涙がいくつもいくつも零れてしまうー…







どれだけ先輩は誠実に私の想いに対応してくれようとしてるんだろ……。














『………成田先輩、それって………』




山科先輩は口を開くも途中で口を閉じ、そしてため息をひとつもらす。












『……マネージャーとして俺の傍にいてもらうことは諦めます。

 けど紗希ちゃんを想う気持ちだけは、俺、絶対に諦めないんで。』






再び口を開いたかと思えば、山科先輩はそう言って先輩に不敵な笑みを見せた。












『じゃ、諦めなくていいや。

 紗希を俺の虜にするから。』






先輩も負けじと山科先輩にそう言い、成田先輩も不敵な笑みを山科先輩に向けた。






二人の目からはまるで火花が出ているような程の、二人の雰囲気ー…









『……あの……私は成田先輩のことが好きなので…。

 虜にするとか言われても、もう虜にされてて…。

 なので、山科先輩の想いは受け取れません……』







私は二人のこの雰囲気を壊したくて、そう静かに言葉にするも。



二人から、すっごい恐ろしい目で見つめられ、首がすくむ……。







なんで成田先輩にまで……?









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