この恋、きみ色に染めたなら
『私、山科先輩にちゃんとお断りしたはずですけど……』
『断られたよ、でも俺も言ったでしょ?
紗希ちゃんのこと、諦めないって』
た、確かにそう言われたけど……。
山科先輩も私同様に諦めの悪い人、だったんですね……。
『俺、行きたい所があるんだよね。
だから放課後、迎えにくるね!』
そして山科先輩は人の都合を聞いてもくれないんですね……
素敵な笑顔、だけれども……
でも、成田先輩に考えてもらっている今、あまりそういうことしたくないな……
『紗希ちゃんも気にいると思うから』
先輩はそれだけ言って、“じゃ”と手を顔の横に上げ、そのまま優雅に教室を出ていく。
『……あ、あの……!』
『紗希ちゃんには拒否権なしね。
てか、一回くらいは俺のお願い、聞いてよ、最後なんだから』
振り返りもしない山科先輩は心なしか抑揚のない声でそう話す。
『じゃ、約束』
そう言って教室から完全に姿を消す先輩ー……
あれは結局…先輩の誕生日をお祝いする感じ……なのかな……?
どうして私、きちんと断れなかったんだろう……