この恋、きみ色に染めたなら
山科先輩の顔が少し歪んでいたからー……
『……あえてここでの想い出は聞かないけど。
俺の誕生日だから、俺のこと、お祝いしてよ』
そんな言葉を言われ、私の心はズキズキと痛み始める。
『………すみません』
口ではそう謝るけど、私の心の中の思いは違うー……
『ま、無理に誘ったのは俺なんだけど』
山科先輩はそう言って失笑してる。
そんな山科先輩に視線を向けながら、それでも私は違うことばかり考えている。
記憶の中にも、私の心の中にも、成田先輩のことでいっぱい……
こんな私、山科先輩の誕生日を心からお祝いなんて出来ないよ……
『…………山科先輩……あの……!
私、やっぱり帰ります!』
私は席から立ち上がり、そう山科先輩に伝える。
その私の様子に山科先輩は驚いた顔を見せる。
『……ここの想い出、成田先輩との想い出なんです!
山科先輩が諦めてくれる、そう言われて…ついてきてしまったけど。
でも……ここも成田先輩がくれた想い出で私の心の中いっぱいなんです…。
だから……ごめんなさい……私、山科先輩のお誕生日…お祝い出来ません!』
ここがお店の中で、他にもお客さんがいることも忘れて、私は大きい声を出してしまった。