この恋、きみ色に染めたなら
『………そんなにあの人のことが好きなんだ……』
山科先輩は視線を床に落とし、表情を隠し、呟くように言った。
『……でもさ、まだあの人は紗希ちゃんにちゃんとした返事をしてる訳じゃないんでしょ?
紗希ちゃんはあの人のものって…そういう訳じゃないじゃん……。
それなのに、なんで俺の誕生日を祝ってもらうのもダメなの…?』
山科先輩の声が少し震えているような気がした。
そんな気がしたけど、それでも私は言葉を続ける。
『……私が嫌だから……。
成田先輩以外の人とこうやって二人きりになるのも……成田先輩との想い出の詰まった場所に成田先輩以外の人と来るのも……私が嫌だから………』
ちゃんと成田先輩への私の想いを山科先輩に伝えよう。
そう、思ったんだー……
山科先輩が諦めるのを待つとか、そういうんじゃなくて。
私の心には迷いがないから、だからハッキリ言わなきゃ。
『………ごめんなさい……』
私はその場で山科先輩に向かって頭を下げる。
ごめんなさい、気持ちを受け取ることが出来なくて……そう伝えるかのように、私は深く頭を下げた。