この恋、きみ色に染めたなら






『は?ちょっと何?』




先輩は私の突然の涙に焦ったのか、少し戸惑ってる感じだった。










『……あ、ごめんなさい…。
 先輩に笑えるようなエピソードを思い出せって言われて……振り返ってみたんです…。

 彼と過ごした時間や彼と作り上げた思い出を……。

 そしたら……』




この先の言葉を言う前に詰まってしまう私。



そんな私に、先輩は椅子に座っている私と目線が合うように背中を丸め、同じ高さになる。







『そしたら?』




ふと先輩の目を見ると、とても優しい目をしていて。


先輩の“そしたら”は私の言葉を受け入れてくれそうな、そんな“そしたら”で…









『……いつも泣いてました……私……。
 大好きな人といるのに……この人といつまでいられるかな…って…。
 私が一番だと言ってくれる、その口で、何人の女の子に同じ言葉を言ったんだろうって……。

 別れたくなくて……失うのが怖くて……。

 ずっと“私だけを見て”とも“私だけを好きになって”とも言えなかった……』








怖かった。




本当は比呂に言いたいこと、ぶつけたいこと、沢山あった。





でもそれを言って、比呂に捨てられるのが怖くて…







だから、何も言えなかった。






比呂がすること、いうこと、それを全部容認して、何事もなかったように笑う振りをして…。










でも、それでも私の一生懸命な恋、だったー…。










< 27 / 324 >

この作品をシェア

pagetop