この恋、きみ色に染めたなら
『は?ちょっと何?』
先輩は私の突然の涙に焦ったのか、少し戸惑ってる感じだった。
『……あ、ごめんなさい…。
先輩に笑えるようなエピソードを思い出せって言われて……振り返ってみたんです…。
彼と過ごした時間や彼と作り上げた思い出を……。
そしたら……』
この先の言葉を言う前に詰まってしまう私。
そんな私に、先輩は椅子に座っている私と目線が合うように背中を丸め、同じ高さになる。
『そしたら?』
ふと先輩の目を見ると、とても優しい目をしていて。
先輩の“そしたら”は私の言葉を受け入れてくれそうな、そんな“そしたら”で…
『……いつも泣いてました……私……。
大好きな人といるのに……この人といつまでいられるかな…って…。
私が一番だと言ってくれる、その口で、何人の女の子に同じ言葉を言ったんだろうって……。
別れたくなくて……失うのが怖くて……。
ずっと“私だけを見て”とも“私だけを好きになって”とも言えなかった……』
怖かった。
本当は比呂に言いたいこと、ぶつけたいこと、沢山あった。
でもそれを言って、比呂に捨てられるのが怖くて…
だから、何も言えなかった。
比呂がすること、いうこと、それを全部容認して、何事もなかったように笑う振りをして…。
でも、それでも私の一生懸命な恋、だったー…。