この恋、きみ色に染めたなら
『……待ってください……話を聞いてください……』
お願い。
お願い、話を聞いて。
祈るように私は何度も心の中で“お願い、お願い”と繰り返す。
『お前の話なんか聞かない。
なんで俺がお前の話を聞く必要がある?』
発せられた先輩の言葉にやっぱりズキって胸が痛む。
私は制服のスカートの裾を握りしめ、深呼吸する。
『……先輩は聞きたくないかもしれないけど…。
私は先輩に話したいことがあるんです…!
だから…話を聞いてください…!』
私がそう言い切った時、先輩の目の前にある歩行者信号が青に切り替わる。
先輩もそれに気が付き、私に背を向けて歩き始める。
『…………成田先輩……!』
私は再び、その信号を渡る先輩に追いつきたくて、今度こそその腕を掴んで、私の話を聞いてもらいたくて……
『……先輩……!』
何度呼んでも振り返らない先輩。
先輩は信号を渡り切って、もうすでに先を進んでいる。
『………先輩…!…待って………!』
どうしても先輩に言いたいことがあるの!
どうしても先輩に謝りたいことがあるの!
どうしても先輩に伝えたい想いがあるの!
だから、先輩、振り向いてよ………!
『……成田先輩、待って………!』
突然の眩しい光が私に向けられたと思った瞬間、私はその足を止める。
いや、突然の眩しさに足を止めてしまったんだー……
その数秒後にキキィ…と車の急ブレーキをかけた時に地面が擦られる音が聞こえて……
その眩しい光に包まれた、そう頭の中で理解した時にはもう私の体は道路に打ちつけられていた。