この恋、きみ色に染めたなら
*紗希と紗季の二人だけの約束
再び目を開いた時ー……
不思議と体中の痛みが消えていて、そして私の目に映ったのは、頭部から血を流すもう一人の私。
そんな私を抱きかかえて必死に私を呼び続ける成田先輩の姿ー……
………どういうこと……?
私、ここにいるはずなのに……。
どうしてもう一人の私がそこにるの………?
『先輩?先輩、私ここにいるよ?』
先輩にそう言うも先輩はもう一人の私を抱きしめているだけで私の方に振り向かない……
振り向かない…じゃなくて……私の声が聞こえなかった……?
『先輩!先輩!』
私はさっきよりも大きな声で叫ぶ。
でも振り向かない先輩に、私は何度も呼びかける。
何度呼びかけても振り向かない先輩の元に駆け寄り、先輩の腕を掴もうとする。
きっと腕を掴んで先輩を呼べば、きっと先輩は私に気が付いてくれる!
そう信じて、手を伸ばし、先輩の腕を掴む……でも私の手は先輩の腕を通過してしまう。
『……先輩に触れられない……?』
もう一度先輩の腕を掴もうとするもやっぱり先輩に触れることはできず、通過していくー…
『………なんで………?』
『……どうして……?』
『先輩、私、ここにいるんだよ………!
先輩……気が付いてよ…私、ここにいるんだよ……』
何度も何度も声に出すも、何度も先輩の体に触れようとするも、先輩は私に気が付かない。