この恋、きみ色に染めたなら









『他には傷は……』





真理子さんと山科先輩で確認するも、どうやら私の傷は頭部からの出血だけらしい。








『息もしてるけど………』



真理子さんのエプロンは所々に私の血が染み込んできていて、それに気が付いた山科先輩が鞄の中からタオルを取り出し、それも私の頭部に当て始めた。












『俺………紗希が追いかけてきて、でも紗希の話聞けなくて……そしたら紗希、また俺を追いかけてきて………』









『………まさか…あの横断歩道を飛び出したの……?』








真理子さんの言葉に成田先輩は首を縦に振る。








『………俺のせいだ………俺がちゃんと立ち止まっていれば……』









違うよ、違うよ、先輩?



私が信号無視したから、だからこうなったんだよ?



私、あの時歩行者信号が赤になってるの分かってた、それでも先輩に追いつきたくて、それで………











『………そう……それで……………』







真理子さんは私の頬を撫で、その目に大粒の涙を溜めている。









『………紗希は…………俺の傍にいるって………そう言った……。

 なぁ……真理子、紗希、大丈夫だよな………?』









『………大丈夫だよ。紗希ちゃんは大丈夫だよ』








真理子さんは成田先輩にそう言うけれど、真理子さんのエプロンも、山科先輩のタオルも血で染まっていく様子に私は“大丈夫”だとは思えないー……





むしろ私がこの半透明の姿で、自分の体を見つめていること自体がやばいよね……









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