この恋、きみ色に染めたなら
『紗希さんは肇にとって、とても大切な女の子みたいだから。
私も紗希さんを肇のところに戻したいの…』
『………私は……先輩の大切な女の子なんかじゃないです。
先輩の大切な女の子は紗季さんだけです……!』
……そうだよ。
私がどんなに先輩を強く想っても、先輩の心には紗季さんがいるー……
紗季さんがいないからこそ、先輩は私のことを考えようとしてるんだからー……
『肇の心が本当にそうなら私は本当に嬉しい。
けど、私は肇の心には違う女の子がいると思う』
紗季さんはそう言うと、ある方角に指をさす。
それはまるで“あれを見ろ”と言わんばかりの仕草で、私はその方向に視線を向けた。
『…………先輩………?』
そこには検査と処置が終わったのか、個室の部屋のベッドで眠る私の横に成田先輩が私の手を握りながら座り込んでいる姿が見える。
思わず私は“先輩”と口にする横で、紗季さんは成田先輩の元まで歩いていく。
私は紗季さんの後に続いて、成田先輩の元に近づいていく。
近づいたところで、先輩の声が聞こえてくるー………