この恋、きみ色に染めたなら








『ーーーーーっくしゅん…!』







幸せに浸っていたところに聞こえる大きなくしゃみ。




私と先輩は顔を見合わせ、先輩がそっと廊下の方に出ていく。












『…………え………!』





先輩が廊下に出て数秒後に聞こえてくる、先輩の声。


体を起こし、私も廊下に出ていきたいところだけど、体はまだ思うように動いてくれない。






“先輩”と呼んでみようかと思った、それと同時に現れる成田先輩は今までに見たことのないくらいに真っ赤な顔をしていて……




そして少し遅れた形でお父さんとお母さん、そして医者と看護師が入ってきた。





お父さんもお母さんも医者も看護師も気まずい顔、というよりも照れている様子に見えて、先輩の真っ赤な顔と一緒に考えてみると一つしか思い浮かばない。












『…………えっと………』





最初に口を出したのは、30代位の医者だった。










『紗希ちゃん、気分はどうかな?

 交通事故にあったの、覚えているかな?』






そう問いかけてきたので、私は頑張って口を動かす。









『……大丈夫です……。

 事故のことも……覚えてます……』




私の受け答えにお父さんもお母さんも安堵の笑みを見せている。












『病院に搬送されてきた時、頭部からの出血がすごかったんだけど、CTとMRIの両方の検査をした結果、脳内の損傷や異常は見受けられませんでした。

 頭皮の表面近くには多くの血管があって、それで大量に出血しちゃっただけだから、処置もしてあるから大丈夫だからね。

 今日は念の為に入院してもらうけど、意識も戻ったことだし、あとは掠り傷とかだからすぐに退院できるから』








医師はそう言うと、ニッコリと微笑んで、看護師と共に病室を出ていった。






残されるお父さんとお母さん、それから成田先輩と私ー……











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