この恋、きみ色に染めたなら








『……あ、成田君、すまないね……』





お父さんは緩んだ顔を引きしめ、そして成田先輩を見つめた。








『……いや、私が学生の頃にこんな風に親に挨拶が出来たかな…と思って』





『…そうよね、私の親に結婚の話をするときだって、あなた、私の親の前でカチカチになっちゃって成田君みたいに話せなかったものね』






『いや……彼女の親っていうのは一番怖い相手なんだよ』






『そんなものかしらね』





お父さんとお母さんは微笑ましい様子で話していて、先輩もその様子に少し緊張が解けたのか、その顔に少し笑みが出始める。










『……あ、いや……そんな話はどうでも良くてだな。


 私と妻は紗希が心から好きだと思える人に出逢えたこと、そして紗希、私たちのことも考えてくれる相手だと知って尚更嬉しいよ。

 成田君、我儘な娘ですが、娘を宜しくお願いします』






お父さんはそう言って、成田先輩に頭を下げた。




お父さんのそんな行動に成田先輩は焦った様子で、お父さんに頭を下げた。








『……ありがとうございます。

 紗希さんのこと、大切にしますので、宜しくお願いします』






お父さんと成田先輩、お互いに頭を下げている様子を見て、お母さんが私も耳元で囁く。









『紗希、男を見る目、あるじゃない。

 きっと彼は紗希のこと大切にしてくれるから。

 あなたも彼のことを大切に、二人で沢山幸せになりなさい』







お母さんの言葉に私は頷く。







そうだね、お母さんー…



私は、先輩にこんな風に言ってもらえて幸せ者だね。



私も先輩を大切にする、先輩と幸せをたくさん共有していく。










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