この恋、きみ色に染めたなら







『あ、成田君も送るわよ?

 良かったら車に乗っていく?』





お母さんは成田先輩に声をかける。









『……ありがとうございます。

 でも、もう少しだけ紗希さんの傍に居させて頂いても宜しいですか?


 すいません……やっぱり紗希さんが目を覚ましてくれて嬉しくて……』




成田先輩は少し照れた様子でそう答え、お父さんとお母さんはそんな成田先輩に顔を見合わせながら微笑んでいる。











『…じゃ、紗希が退院したら、是非、家にも遊びにきてね。

 紗希を宜しくお願いします』





お母さんがそう言い、成田先輩は軽く頭を下げる。





『是非、お伺いさせて頂きます』




成田先輩の言葉にお父さんもお母さんも嬉しそうな顔を見せながら、病室を出ていった。









再び二人だけの空間になるー……





先輩は私の元に優しい笑顔を見せながら近寄り、ベッドの脇の丸椅子に腰かけた。











『………先輩……。お父さんとお母さんに“お付き合いさせてください”って言ってましたけど……。

 私、先輩からまだ“付き合って下さい”なんて言われてませんよ…?』




私の言葉に先輩は頬を赤く染め、私から視線を離す。









『……俺の傍にいろって言ったじゃん。

 あれが、つまり“付き合ってください”ってことだろ?』








『えぇーーーーーー!!

 女の子は大好きな人に“付き合って下さい”って言われたいんです!』








言ってよ、先輩。

 



私、先輩から聞きたいよ。










『いいじゃん、俺もお前も想い合ってるんだし。

 だから言葉なくても分かるじゃん』









『………分かんない。私は先輩から聞きたい!

 いっぱい泣いた恋だもん、ちゃんと幸せな恋になるって…証明してよ、先輩』











『………ったく。マジでこんなに面倒な女に落ちるなんてな』




先輩は怒った顔で、そっぽを向き、冷たく言い放つ。













< 305 / 324 >

この作品をシェア

pagetop