この恋、きみ色に染めたなら
Epilogue
次の日、私は無事に退院した。
退院後、その日の夜は退院祝いと言って成田先輩も呼んでちょっぴり豪華な夕食をとった。
成田先輩の元々のイケメンな顔に私のお母さんはメロメロになっていたし、お父さんもだいぶ成田先輩のことを気にいってくれた様子で、二人でお酒と炭酸で何度も乾杯していた。
『紗希のお父さんとお母さん、すっげーいい人たちだな。
あの親の子どもだから、紗希もいい奴なのかもな』
酔っぱらってしまったお父さんをお母さんがソファーで寝かせている。
それから少し離れた窓から夜風に当たっている私に先輩は近寄り、そう声をかけてきた。
『……なんですか、急に。
まぁ…自分の親なので、いい人って言われたら嬉しいですけど』
『紗希が目を覚まさない間、二人ともすっげー心配そうな顔で紗希を見つめててさ。
医者からも問題はないって言われててもそれでもずっと紗希の顔を見てた。
俺、少し離れた所から見てたんだけど、紗希はすっげー愛されてるって思ったよ』
『…一人娘だからかな』
私がそう答えると、先輩がこちらに顔を向けてくる。
先輩と目が合った瞬間、夏にも関わらず涼しい風が吹いてきて、私たちの髪の毛を揺らす。
段々と先輩の目が、先輩の表情が真剣になっていく。
『………先輩……?』
沈黙が流れる雰囲気を変えたくて、私は先輩を呼びかける。
『…一人娘か。じゃ、紗希が嫁にでも行ったら、さぞかし辛いだろうな、あの二人…』
先輩の言葉に私は息を呑む。
私が嫁に行ったらって………
『俺が紗希を奪ったら、泣かせちゃうかな?』
あまりにも真剣な顔で先輩が言うもんだから、私は先輩のその言葉の意味をもう少し知りたい気持ちに駆られる。
『……先輩……それどういう意味で言ってます…?』
『俺と紗希が結婚したら、っていう意味』