この恋、きみ色に染めたなら
途中、私たちはお墓に添える花とお線香、そしてライターを購入して、先輩の案内の元、その場所に着いた。
サワサワ……と木々がお互いに触れあう音。
少し煩いくらいに聞こえる蝉の大合唱を聞きながら、私たちは紗季さんの前に立つ。
『………紗季。連れて来たよ…』
隣に立つ先輩の顔は少し歪んでいたけど。
私は紗季さんが眠るお墓を見つめる。
『紗季………俺さ。
ずっとお前のこと、好きだったよ。
なんでお前に言えなくなった後で自分の気持ちに気付くんだって、すっげー後悔してた。
お前の気持ちも後になって聞いて、どうしてもっと早くに気付かなかったんだって……尚更後悔して生きてきたよ……。
お前は俺みたいな鈍感な男を好きになる時間しかなかった、だから俺はお前を余計に忘れちゃダメなんだって思うようにしてた。
俺は新しい恋をしてはいけないと、それはお前への償いにもならず、お前を裏切ることだって……。
けど、俺……もう一度、温かな日々に包まれながら過ごしていきたいと思った…。
お前がいた日を思い出して後悔する日々じゃなくて……またもう一度誰かを好きになって、その人と生きていきたいって本気で思ったんだ……。
俺にそう思わせてくれたのが、隣にいる古里紗希さん…』
先輩はそう言って、私に視線を向けてくる。
微笑んでいるけど、どこか真剣な顔をしていて、私も先輩を見つめた。