この恋、きみ色に染めたなら
『……え……紗希、ですか…?』
先輩に問いかけた子の顔が引き攣る。
いや、その場に居合わせた女子全員の顔が引き攣る、それが正しい状況だ。
『そ、紗希。
あの女、どこが席なの?』
その問いかけに、更に追い打ちをかけるかのように女子の顔が引き攣っていく…。
穴があるなら、そこに潜りたい…
この場所から逃げ出したい…
そう、思った瞬間。
『紗希、これ忘れていったぞ!』
私を見つけたんだろう。
先輩は思いっきり呼び捨てにして、私を呼んだ。
だから…
私を見つけないでください。
私の名前を呼ばないでください。
と、心で嘆くも、先輩はズカズカと教室に入り、そして私の席までやってきた。