この恋、きみ色に染めたなら
『……うん。
自分から“お願いします”なんて言ってないんだけど。
なんか流され流され…昨日から少しずつ始まっちゃって…』
気がついたら、いつの間にか先輩の言うとおりにしてて。
流され流され…
『まぁね、確かに“氷の美男子”こと成田先輩からお声をかけられたら断れないっていうのもあるよね…』
凪の言葉に私も曖昧に頷く。
今までは遠い人、だった。
全校女子生徒の憧れの人、そんな人に誘われて断れる女子なんていない。
だから、私が断れなくてもおかしいことじゃない。
『でもさ……どうして私なんかをモデルに選んでくれたのか…先輩は理由を教えてくれないし…』
『え、紗希は普通に可愛いよ?
結構あんたモテてるんだけど、そのこと知ってる?』
凪はすっごい真面目な顔をして、私の顔を覗き込んでくる。
『いやいや!私なんて可愛くもないし、美人でもないし。
それに凪だってこの間隣のクラスの男子に告られてたじゃん!』
私がそう凪に言い返すと、凪は“紗希、自覚なし?”と心底驚かれた顔を見せ、そう言った。