この恋、きみ色に染めたなら
『凪、私、絵のモデル…やっぱり辞退してくる!』
私がそう言うなり、席を立ちあがったと同時にHR開始のチャイムが鳴り響く。
『お前ら席に着けー!
出席とんぞー!』
だらだらと教室に入ってきた、やる気全くのゼロの担任がそう言い、私は渋々と自分の椅子に座りなおした。
凪も、黒板の方へと体の向きを変えた。
『相原ー』
『宇佐美ー』
一人一人の名前を読み上げ、確認していく担任。
凪はくるりと振り返り、
『まぁー…紗希にも先輩にも恋愛感情がなければ何事も起きないだろうし、辞退しなくても平気でしょ!』
と、だけ言ってきた。
恋愛感情はありません。
昨日、比呂に振られたばかりで、先輩との出会いも最悪だし。
きっと絵を描く人とモデル、その関係は変わらないと思うし。
『失恋の痛手は別の男性に癒してもらった方がいいって言うでしょ。
恋に発展するとかしないとかじゃなくても誰かと過ごす時間は思いださずに済むでしょ!』
凪はそう付け加えると、黒板の方に再び体を向き直した。