この恋、きみ色に染めたなら
『とりあえず入れよ』
先輩はそう言うと、私の腕を引いて美術室に入れさせた。
入ったのはいいけど、なかなか足が動かずじまいで、私はその場に立ち尽くす。
先輩は奥へと歩いていき、もう用意されていたキャンバスの前で椅子に腰かけた。
『なにやってんの、紗希?』
一歩も踏み出せていない私に気付き、先輩はそう問いかけてくる。
『モデルがいないと描けないんだけど!
それともモデルを辞退したいの?』
先輩の言葉に、私は顔をあげ、先輩のことを見つめる。
先輩は真面目な顔をしていて、その目は射るように強い目で。
その目に見つめられると、私の口は尚の事開けれなくて。
ただ、ただ、黙ってしまう。
『モデル辞退ね……
紗希がそうしたいならそれでもいいよ?』
先輩はそう言うと、椅子から立ち上がり、面倒くさそうな顔をしながら私の元まで歩いてくる。