この恋、きみ色に染めたなら
廊下に出たところで、先輩は再び美術室に入り、電気を消した。
『お前さ、出てくる時は電気を消してから来いよ』
そう言って、呆れ顔で私を見つめる先輩に、私は深々と頭を下げた。
『紗希ってさ、すっげー素直』
先輩はそう言うと、一人黙々と廊下を歩いていく。
私はその先輩の背中を追うように必死に足を動かす。
で、でも……先輩、足…早っ!!
身長も大きいから足も長いし、私との一歩が違いすぎるよ…!!
うぅ…でも先輩から離れちゃうとケーキご馳走してもらえなくなるし…
いや、待てよ?
きちんと先輩から依頼の理由を教えてもらった訳じゃないのに、ケーキをご馳走してくれるというだけで簡単に着いていく…それでいいの…?
完璧、先輩の思い通りになっちゃう気が……
で、でも……
そんなこんなを考えていると更に私の足は遅くなったのか、いつの間にか距離がかなりあいてしまっていた。
すると、先輩はくるりとこちらに振り返り、
『本当、トロい女…』
そう言ったかと思うと、私の方まで歩み寄ってきて、私の手を引いた。
まるで昨日、美術室に連れて行かれた時のように。
先輩は私の手を引き、そのまま歩いてくれたー…