この恋、きみ色に染めたなら
『…だったら何?』
先輩の肯定とも否定とも言い難い、その言葉。
それでも“違うけど”とか言われた訳じゃない。
『……もしそうだったら…先輩、私の話も一応聞いてくれていたんだな…と』
『ガトーショコラを勧めたのは俺だし、もし口に合わなかった時にブツブツ文句言われんのが面倒臭かっただけ』
先輩はそう言って、私から視線を反らす。
“ブツブツ文句”って…
多分、私、言わないと思うんだけどな…
『はい、ガトーショコラの紅茶セットです!』
そんなことを思っていると可愛らしいお皿にガトーショコラ、そして可愛らしい大きさのチーズケーキとイチゴのショートケーキが並べられているものが私の前に置かれた。
イチゴのショートケーキにはチョコで作られたウサギが飾られていて、食べるのが勿体ないくらい。
『わー…すっごい可愛いー!!
すごい美味しそうだし、食べるのが勿体ないなー!!
あ、写真!写真に撮って記念に残しておこ!!』
私は角度を変えて、何枚もケーキ達の写真を撮影した。
私の真ん前の先輩はそんな私にため息をもらす。
『お前さ、ケーキは食するものであって撮影して喜ぶものじゃないだろ』
そんな先輩の言葉を無視して、私は一番美味しそうに見える写真が撮れるまで撮り続けた。
『だーかーらー!
ケーキは食するものだって!』
私が撮影に夢中になっているなか、先輩はフォークで迷いもなくガトーショコラを突き刺した。
『…え!!
先輩、何やって…!』
“何やってるんですか”と言おうとしていたのに…。
先輩はフォークに突き刺さっているガトーショコラの一部を私の口に突っ込んできた。
口に入った瞬間に広がる甘さと苦み。
それはまるで先輩みたいで。