この恋、きみ色に染めたなら







“俺のことを好きになるな”






ふと先輩が言った言葉が脳裏を過る。









確かにそうかもしれない…。




先輩を好きになっても楽しいことなんて一つもない、そう言い切れるもん。





“氷の美男子”なんて言われちゃって、沢山の女子から想われていて、私もその中の一人になって、ただその人だかりに埋もれるだけで。




先輩には届かなくて…。






きっと、先輩に恋をしたら、比呂を想っていたあの時よりも辛い恋になることを覚悟しなきゃいけなくて…。







比呂とも結局ダメだったのに…






先輩を好きになれる訳がないよ…








だから、ドキドキなんてしちゃいけない。



先輩の新しい表情を見ても、目を、心を奪われてはいけない。









だって、私がしたいのは。



想って、想われる恋、だもんー…







叶わない想いだけを、届かない想いだけを胸に秘めてる恋なんて…。





苦しすぎて、悲しすぎて、もう私には無理、だもん…。

















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