この恋、きみ色に染めたなら
『………いえ………大丈夫です……』
『あっそ、なんか気にしてるみたいだったから一応聞いてみたんだけど』
先輩はそう言って、私にフォークを返してきた。
『あ、口はつけないようにしたから』
付け加えられた言葉に胸がドキッとする。
『…………ど、どうも……』
戻されたフォークを見つめるも、そのフォークを使ってしまってもいいのか悩んでしまう。
先輩も使ったフォーク………
変態か、私は!と自分に突っ込みをいれるも、使えないでいるフォークを眺めていると、
『真理子、ごめん、フォーク頂戴?』
先輩は店主にそう頼んだ。
店主は言われた通りに新しいフォークを持ってきてくれた。
その代わりに、先輩は私が眺めているだけのフォークを店主に渡してしまった。
『気になるよな、ごめんな』
先輩はそう言ったけど、そう言ってくれたけど。
私、先輩が使ったフォークでも良かったんだけどな…