この恋、きみ色に染めたなら
『…あ、あの……私は別に気に』
『ごめん、俺、トイレ行ってくるわ』
先輩は私の言葉を遮る様にして言うと、そのままお手洗いの方へと行ってしまった。
“私は別に気にしない”と言って、私は何がしたかったんだろう…。
なんか先輩といると冷静じゃいられないや……
『……はぁ……』
思わずため息を漏らすと、上の方からクスクスという笑い声が聞こえた。
顔を上にあげると、そこには店主がにこやかに微笑んでいて、私は首を傾げた。
『あいつといると大変でしょ?
彼女さんも大変ね、あいつと付き合うのも!』
店主の言葉に私は全力で手をブンブンと振り、“彼女”という言葉を否定する。
『ち、違いますよ!!
先輩の彼女とかじゃなくて……ただ先輩の絵のモデルをさせて頂いているだけで……』
私の言葉に店主は驚いた顔に切り替わる。
『あら、本当に彼女じゃないの?』