この恋、きみ色に染めたなら
『あの…どうして』
『真理子!それ以上、余計なこと話すな!』
店主に言いかけた、その言葉を遮るかのように先輩が現れた。
現れたかと思えば先輩の視線はとても鋭く、冷たいもので。
さすが、“氷の美男子”と呼ばれているだけある…!
『だって肇が女の子を連れてくるなんて初めてのことじゃない。
少しはあのことを吹っ切れたのかなと、思いまして』
店主はニコニコと微笑みながら、そう話してるけど。
“あのこと”のフレーズに先輩の顔が歪んだように見えた。
“あのこと”ってなんだろう…
『真理子、あのことは俺の前で出すな!』
先輩はすごい剣幕でそう言うと、椅子に置いていた鞄を持ちあげ店から出ていこうとする。
え……私……!
私は…
あ、でもケーキ食べてる途中……
でも先輩が…!
『………すみません…!
ケーキとても美味しかったです!
あ…あと…あの、これ、ケーキ代です…!』
あたふたしながらもようやく鞄から出せた財布から千円札を取り出し、ケーキの横に置く。
『え、これ多いけど…』
『あ、あの…お釣りいりません…!
残してしまったお詫びにしてください…!』
私はそれだけ言い、先輩を追って、そのまま先輩と一緒にお店を出た。