この恋、きみ色に染めたなら
先輩は振り返る、でもその目は笑っていなくてー…
私は笑えていない、その目に唾を呑み込む。
『…………先輩……?』
もう一度、先輩を呼ぶと、
『ケーキ、ごめん。
まだ…食べてたよな…』
先輩の目は、言葉を言い終わる頃には揺れていて。
だから、心配になる。
だから、不安になる。
先輩は強引で、自分勝手で、意地悪なのがちょうどいい。
『……本当ですよ!
ケーキは最後まで味わえないし…。
誰でしたっけ?
ケーキは食するものだって言ったのは!』
私の挑発的な、嫌み満載な言葉に言い返してほしかった。
いつもの先輩らしく、いつもの先輩みたいに言い返してほしくて…
『……ごめん』
でも、先輩はいつもの先輩じゃなかった。
いつもの先輩みたいに言い返してくれなかった。
『……先輩……。
店主さんが言ってた…“あのこと”って…なんですか…?』
私のその問いかけには、先輩は反応してくれた。
『…お前には関係ない』
いつものように覇気は感じれないけど、言い方はいつもの先輩。
でも、やっぱり、いつもの先輩じゃないー…