この恋、きみ色に染めたなら
第2章

*モデルと描く人







あれから先輩は無言で、いつもよりゆっくりと歩いて駅まで送ってくれた。



“ありがとうございました”って言いたかったけど、先輩の顔が見れなくて、私は頭だけ下げて駅の人ごみの中に紛れた。





本当は先輩の顔が見たい。


本当は先輩の声が聞きたい。




でも、先輩のこと、見れない。


先輩の声が聞きたいのに、何も話せない。






どうやって家までたどり着いたのか。



体が覚えてたから帰れた、としか言いようがないほどに無意識だったと思う。





それから一睡もすることなく、朝を迎えて、いつの間にか私は学校の教室の前まで来ていた。





どれだけ無意識に動いてるのか、そう自分でも驚くくらい。






私が教室に入るなり、先に登校していた凪が私の元に近寄ってくる。






『紗希、おはよー!
 昨日はどうだったー?』




何も事情を知らない凪はルンルンで問いかけてくる。






『……あ………おはよ、凪…』





私の沈んだ声に何かあったと気付いたのか凪は私の顔を覗き込んでくる。






『……何?』


『紗希、目の下にクマが出来てる。
 昨日、寝れなかったの?』




凪の言葉に、私は鞄から手鏡を取り出し、目元を鏡越しに見る。



凪の言うとおり、目の下にはクマが出来ている。



学校に来る前も無意識に動いてたから、きちんと鏡見てなかった…





こんなにくっきりクマが出来て…




今日は先輩に顔、見せれないよ…




そもそも見せれる顔じゃないんだけど…




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