この恋、きみ色に染めたなら
『紗希、先輩となんかあったの?』
凪は心配そうに聞いてくれるけど。
別に何か特別なことがあった訳じゃない。
『……ううん…何も。
先輩にケーキをご馳走になって…』
ケーキを食べていたら、店主さんが“あのこと”と先輩に言って、先輩が不機嫌になっただけ。
絶対に“あのこと”が絡んでるはずなのに、、先輩には“知らなくていい”って言われただけ。
ただ、私が先輩を意識の対象にしてる、そう気付いただけ。
『食べるの大好きな紗希がケーキの話をしても沈んでるのはなんかあったからでしょ?』
凪の言葉に、目頭が熱くなっていく、そんな気がした。
凪の“紗希のことならすべてお見通し”とでもいう顔に、このどうしようもない気持ちを聞いてもらいたくなって…
『……凪………私………私ね、先輩のこと』
『きゃぁーーーーーー!!!』
凪に言いかけた言葉を遮るように女子達の悲鳴にも近いほどの歓声があがる。