この恋、きみ色に染めたなら
『そっか…。
成田君…まだあのことを乗り越えていないんだね……』
柳先生はまた“あのこと”と言う。
柳先生が言う“あのこと”とは何か。
私は柳先生を見つめ、口を開いた。
『柳先生…。
さっきも“あのこと”って言ってましたよね…?
“あのこと”ってなんですか…?』
聞きたくて聞いた。
でも聞いてはいけない、そうも思える。
それが何故かは分からない。
でも柳先生の顔を見ていると、そう思ってしまうー…
私の視線を感じ、柳先生は一度、クッションが置かれた椅子を見つめ、その口を開いた。
『この席ね?
成田君の思い出の人の席なの…』