この恋、きみ色に染めたなら
『彼、いつもこの部屋で同じ人の絵を描いていた。
その人の笑った顔を何枚も描いてはまた描いて。
うん……描くというよりもその人と過ごす時間が彼にとっては大切だったのかな』
先輩がこの部屋で同じ人の絵を描いていた……?
何枚も、何枚も……
柳先生の言葉に胸がズキズキし始める。
『その人もここで成田君のモデルをやってた。
いつも楽しそうだった、いつも幸せそうだった。
私がこの部屋の前を通りかかる度、いつもこの部屋から二人の笑い声が聞こえてきて、何故か私も楽しくなったり、幸せな気分をもらってたな…』
楽しそうだった……
幸せそうだった……
この部屋から二人の笑い声……
『あ、ごめんね…!
私、ペラペラと話して……』
よっぽど私の顔がまずかったのかな…
柳先生は私を見つめ、オロオロし始める。
でも、
でも、
先生に聞きたいことがある。
先輩に問いかけたところで“知らなくていい”と言われるような、そんな質問。
でも、先生なら…答えてくれますよね……?
『……先生、成田先輩とその人は……どういう関係……だったんですか…?』
私の問いかけに、柳先生の瞳が揺れるー…
私は柳先生から先輩とその人との関係が知りたくて、教えてほしくて。
いつの間にか、先輩に“入るな”と言われていた、その部屋に入っていた。