この恋、きみ色に染めたなら
『成田君達が高校一年生の夏休みを迎える、ほんと少し前にね…。
交通事故だった……運転していた人の居眠り運転で……』
柳先生は遠い昔の出来事を思い出すかのように、そう言った。
先輩に、そういう人がいた、それも驚きだったー…
だって先輩は“恋したことない”そう言ってたからー…
なのに本当はそういう人がいて、今でもなお、その人の事を忘れられてなくてー…
『…………そう…だったんですか………』
柳先生に何か答えなきゃ、柳先生が困るかな、そう思った。
でも今の私に言えるのはこんな言葉しかなくて。
柳先生への申し訳なさが心いっぱいに広がる。
『それから成田君、感情を表に出すことがなくなったように私には見えてたんだけど…。
でもさっきの古里さんとの会話で見せていた彼の顔、とても真剣だった。
だから成田君、彼女の死を乗り越えてくれたのかな、と思ってしまったんだけど…』
乗り越えてない。
乗り越えてなんかない。
先輩は今でも、その人を。
彼女のことを忘れられてない…!