この恋、きみ色に染めたなら
美術準備室に向かってくる足音が聞こえた。
先輩が来る…!
そう悟った私は急いで先輩の絵に布を被せ、クッションを椅子に戻した。
でも思ったよりも先輩の足音は早くて、私は柳先生が画材を置いた机の下に潜り込んだ。
ちょうど机の下半分は布で隠されていて、私はその中に身を潜めた。
タッチの差、だったと思うー…
『先生、持ってきたけど』
先輩の声がした。
『……あら、成田君。
重いのにごめんね…』
若干、柳先生の声が震えている気がする。
突然の成田先輩の登場に、そして私が隠れていることがバレないことを願ってなのか、先生の声は震えていた。
『あれ、あいつは?』
『…え、あいつ?』
『紗希、…ほら先生が荷物運びに指名した女!』
『え……あぁ…古里さんね!
彼女ならもう運び終えて教室に戻ったわよ…?』
机の下半分を隠すようにかけられた布、実は私の方からだと床との少しの隙間があって、そこから足元だけなら見える。
柳先生の言葉の後、先輩が床に段ボールを下ろし、そして足を柳先生のいる方へと動かすのが見えた。