この恋、きみ色に染めたなら
『アイツをここに居れたくないんです。
だってアイツは“さき”だから…』
アイツは“さき”だから……?
先輩の発した言葉に私の脳内にはクエスチョンマークが飛び交う。
でも、柳先生には先輩の“さきだから”の言葉の意味が分かったのだろう…。
『あなたがこの部屋で一緒に過ごしていた人も、“さき”だから…?』
柳先生は、そう先輩に問いかけた。
柳先生の、その問いかけに、私の心臓は一瞬止まるかと思ったー…
先輩がこの部屋で一緒に過ごしていた人も、
あの絵の人も、
私と同じ、“さき”っていう名前、だから…?
柳先生の問いかけの意味はそういうこと?
“お前、名前は?”
“1年の古里 紗希ですけど”
“じゃ、これからは紗希って呼ぶわ”
先輩と初めて美術室に来た時の会話が不意に頭の中を過っていく。
“氷の美男子”と呼ばれている先輩に名前呼びされることに浮かれていた私。
でも先輩は……
“じゃ、これからは紗希って呼ぶわ”と言った時、
どんな想いで、私にそう言ってくれたんですか…?