うさぎのアンちゃん。
一人より二人
さむいさむい冬のはじまり。

アンちゃんはとても上手に、雪で〝かまくら″をつくりました。

「よし! これでお家ができたわ! ご飯も大丈夫ね。カモノハシの家族と一緒にたくさん集めたから」

と、じまん気に鼻をヒクヒクさせました。

そして鼻歌をうたいながら、静かな森の中をお散歩するのでした。


すると木のかげからとつぜん、大きな大きなクマが出てきてアンちゃんの方へ走ってくるではありませんか。

アンちゃんはびっくりして逃げようとしましたが、足が雪にハマり、動けませんでした。

「きゃー!! たすけて!! 」

と、さけんだときになんと〝もう一人のアンちゃん″が出てきて、アンちゃんの身代わりになって、大きなクマを森の奥の方へとつれていきました。

アンちゃんは何がおこったのかわからず、その場で立ちすくんでいました。

どれくらい時間がたったのでしょう。


雪にハマってしまった足をひきぬいて、〝雪のお家″へとトボトボと歩いていたとき、《大丈夫? 》と、聞きなれない声がアンちゃんに問いかけます。

ハッとして声の方を見るとさっきの〝もう一人のアンちゃん″が息を切らせていました。

《大丈夫だった? 私、リン》

と、〝もう一人のアンちゃん″。


そうです、もう一人のアンちゃんだと思っていたのは、初めてみる〝もう一人のうさぎ″だったのです。


「あ...ありがとう! 助けてくれて本当にありがとう! 私はアンよ」

初めてみるもう一人のうさぎにアンちゃんは丸い目をもっと丸くしました。

《よろしくね、アンちゃん! 冬の間はあぶないから、注意しないとダメだよ? 》

「うん! ありがとう。今日はもうお家に帰るわね」

と言って、帰ろうとしたとき

「ねぇリンちゃん、リンちゃんはお家あるの? 」

とアンちゃん。


リンちゃんはすこし悲しげに言います。

《あったんだけど、くずれてなくなっちゃったの...》

アンちゃんはすぐに、じゃあ一緒に帰りましょう? とリンちゃんに言うと、リンちゃんは嬉しそうにピョンピョンはねました。

その日の夜は初めて、お星様とアンちゃんとリンちゃんの〝3人″でお話しをしました。

お星様も大喜びで、リンちゃんにアンちゃんをお願いねとたのみました。


3人にとってこれほど幸せな気持ちになれた日は初めてだったのかもしれません。


雪がふぶく前に、今日は眠ることにしました。
アンちゃんがつくった〝かまくら″のお家で。

【よかったね、アンちゃん。これほど心強いことはないわ。一人よりふたり、ふたりより三人】

冬の間だけは木々たちもおやすみです。葉っぱのおふとんの代わりに、アンちゃんのお家がこわれてしまわないように、お星様は寝ている木々たちを起こして、すこしだけ枝を〝しならせて″囲いをつくってくれるようにお願いをしました。

【私はこれくらいしかしてあげれないけど、これからは大丈夫ね、アンちゃん】

と、優しくアンちゃんのお家を照らすのでした。
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