晴天のへきれき?
30分どころか20分で来た室井さん。

目を合わす勇気もなく俯いていた。

「大丈夫か?」

「……はい。まぁ、一応」

「驚いた」

うん。

まぁ、私も、吉岡さんの言葉には驚いた。

「ちょっと……ゴタゴタしただけなんです」

「さっき、ここのオーナーって人に話は聞いた」

あ。

一条さんから、話してくれてたんだ。


いい人たちだなぁ。


「立てそうか?」

「はい。すみません、お仕事中」

「もう終わらせる所だった。気にするな」

「でも……」

「でもは無しだ」


だって。


「だって、とかも無しだから」


ふにゃ!?


思わず顔を上げ、腕を組んだ室井さんを見た。

「別にお前は何も言ってない。ただ、今のお前なら言いそうな事だ」


あ。さようでしたか。


「とにかく、場所を移動しよう」

「はい」

言われて、ゆっくり立ち上がる。

「すみません」

「気にするな、と言っているだろうが」

ブツブツ言われて、肩をすくめた。



歩いていると、出口に一条さんと吉岡さんが立っていた。


「色々と、ありがとうございました」

室井さんが頭を下げ、私も下げる。

「いいえ。当然の事をしたまでですから」

ゆったりとした微笑みに、少し安心する。

「よろしければ、今度はお二人でお越しくださいねぇ!」

はい。

もう二度と、よくわからない人とは来ません。


最後に深く頭を下げて、店を出た。
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