晴天のへきれき?
店を出ると、夜風が生温かい。

夏にどんどん近づいてきた季節。

「チエママの所に寄ろうか」

室井さんの言葉に、瞬きをした。

「え……?」

「嫌か?」

無表情に見返されて、また瞬き。


嫌じゃないけど。


何故?


「お前の場合。少し酔って愚痴を言った方がいい」

スタスタ歩く室井さんに、慌ててついて行く。

「あの……」

声をかけると、室井さんは立ち止まり、

ズボンのポケットに、両手を入れたまま振り返った。


「いつでも付き合うと、言っただろう?」


覚えてる。


でも。


「チーフは今日も車でしょう?」

「だが?」

「また私……一人酒になっちゃうじゃないですか」

つん、とそっぽをむくと、室井さんはスタスタと戻ってきた。


戻ってきて、

「にゃ……いひゃいれす!」

頬っぺたをつねられて、涙声で訴える。

「気ばかり回してないで、行くぞ」

「わかりまひた、いくますかりゃ!」

手。手を離して下さい!

室井さんは頷いて、手を離してくれた。


ちっ

鬼畜め!!!


「朝倉」


え? 何も言ってないですよ?


「は、はい」

「俺はたまに思うんだが」


何をですか。


「お前は、たまに俺より幼いと思うぞ」

溜め息混じりに言って、室井さんはまたスタスタと歩き出した。


お、幼いと?


私はあんたより年上だ!

間違いなく年上だぞ!


「ほら。そこでむくれてないで、さっさと歩け?」


おにょれ、覚えてろ~。


いつか仕返ししちゃる!!



そして、チエママの所で私たちはまた、おごるおごらない論争を繰り広げ。



またママに大爆笑された。













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