晴天のへきれき?
イキナリ一目惚れとか。


付き合おうとか。


変だと思ったのよ。


今にして思えば、仕事の話ばっかりだったし。


それが出来なくなったら、確かに、結婚の話をちらつかせてた。


彼の誤算は、私がそれに舞い上がらなかった事くらいか。

って、言うか……

ショックを受けていいものか、それとも怒るべきなのか。


「あの野郎……」


高瀬が怒りの形相で立ち上がる。

しまった、熱血漢を忘れてた。


「ちょっ……」


私が止めるより先に、


俯いたままの室井さんが、高瀬の肩に手を置いて強制的に座らせる。


「おま……っ! 離せよ!」

激昂する高瀬を、室井さんはやたら静かに見返し、

「朝倉に恥をかかせるつもりですか」


その言葉に、高瀬は眉をしかめる。



空気が重い。


「あ、あの。ごめんね? でも、ほら、私はいいカモにされた訳じゃないし……」


カモにはされなかったけど。


駄目だ。


この空気はいたたまれない。


ぱっとテーブル横の伝票を持つと、会計を素早く3で割って代金をテーブルに置く。


「帰りたいと思います!」


「朝倉、送る……」


室井さんの言葉は無視。


バックを手に持ち、素早く立ち上がると明るく振り返った。


「じゃ、明日!」


そのまま店を飛び出した。
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