晴天のへきれき?
「ひゃ……っ!?」

足元と、間近にある綺麗な顔と、勝手に動く風景に瞬きする。

「って、なんで、室井さんに運ばれないといけないんですか!!」


室井さんに抱えられて、思いきり腕を振り回す。


「こうでもしないと朝倉は逃げるだろう」


もちろんだ!

脱兎の如く逃げる!

今は特にそう思う!


だって……


だって!


お姫様抱っこなんだよ!?

こんな事を急にされて、恥ずかしくな
い人間がいるとすれば、花嫁くらいだ!

「いいから、暴れるな」

車の近くに来て、肩に担ぎ直される。


「…………」


私は荷物か……?


助手席に下ろされて、足元にクッションを置かれた。

「ミュール……」

「後でな」

一体いつになるの?

とりあえず、運転席に座った室井さんを睨む。

「なんなんですか」

「お前こそ、なんなんだ」

「なんでですか!」

「そもそも、何故、駅とは逆方向にいるんだ」


言われてあんぐりと口を開けた。


あれ?


「そうなんですか?」

「そうだ」

「いつもとちょっと別の道を、ただ歩いただけなんですが」

その答えに、室井さんはハンドルに突っ伏す。

何だかいろいろ脱力してる?
< 132 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop