晴天のへきれき?
手を差し出されても?

「貸して」

首を傾げる。

「何をです?」

「スマホ」

「あ、はい」


素直にスマホを渡して、


それからハッとする。


「ちょっ……!」


スマホを何やらいじっている室井さん。

人のスマホを、勝手にいじるな!


「室井さん!」

室井さんは煙草をくわえたまま、出しかけた私の手を、見もせずにつかみ取る。

「いいから」

「よくないです!」

「黙って」

「黙れませんから!」


室井さんは完全無視。


何やらスラスラ打ち終わると、微かに視線を上げ、

「高瀬さんと、俺の番号とアドレス」

そう言って、スマホを返してくれた。

「とにかく、高瀬さんには連絡した方がいい。心配してたから」

「……高瀬が?」

「……仲のいい同期で良かったじゃないか」

言われて、スマホを見る。

ダイヤルメモリと、室井さんを見比べて、

「遅いし……」

「さっき、送ったばかりだから」

諭すようにゆっくり言われて、高瀬のアドレスを見てから、発信を押した。

数回のコールの後、高瀬の声が聞こえて……
< 134 / 272 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop